米国アロマセラピストがアロマセラピーのエビデンスについて解説!

October 22, 2020

アロマセラピストの私たちが精油の効果を調べるにあたり、証拠となるものを探そうとしたとき、それがどの程度の根拠のある事なのか、場合によっては判断が難しいことも多いと思います。そんな中で医療機関や科学者等の専門家が行うクリニカルスタディーは、アロマセラピストにとっては大きな証拠とも思えます。

しかしながら、そういった研究では証明されていないものでも、実際にこれまで精油を使ってきたセラピストやプラクティショナーの実践データとして、言い伝えられている効果効能というものも存在します。

今日はアロマセラピーのエビデンスとなるものにはどんなものがあるのか、そして私たちセラピストがそれらとどう向き合うべきなのか、そんな話をしたいと思います。


(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

アロマセラピーのエビデンスの種類と特徴

アロマセラピーのエビデンスには大きく分けて2種類存在します。

① 臨床実験によるエビデンス(clinical research evidence)
② 逸話が基となるエビデンス (anecdotal evidence)

①は何かしらの臨床実験を経て出された結果を基にした証拠です。要は、各専門家が行っている人間が実験対象物の試験です。

②はそれ以外、と括って良いかと思います。科学者等が動物などの物体を使い実験室で行う実験だったり、アロマセラピストやプラクティショナーがこれまで実際にクライアントに行い、個々に積み上げてきたデータはこれに該当します。

User:CFCFderivarive work: タバコはマーダー - http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Research_design_and_evidence.svg, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=49108230による

上記の図がWikipediaから引用したエビデンスの強さをを記したヒエラルキーです。これが上に行けば行くほど、その証拠として認められる力が強くなります。

アロマセラピーで最も多いエビデンスは逸話的エビデンス

ここで注目したいのが、一番下の動物実験やラボでの実験のところです。これは一般的に私たちアロマセラピストが探す文献に最も多いものではないでしょうか。

私としては、実験室だろうと動物だろうと、そこでプラスの結果が出ることは、アロマの可能性が広がる気がしてとても嬉しかったのですが、実際は科学的視点から見るとそれらはヒエラルキーの最下位に位置するのですね。

ドテラ社でも自社ラボを設立したり分析所と提携して、毎年素晴らしいリサーチを出していますが、それらもここの部類です。

そしてその上にあるのが、いわゆる非専門的な実験や実践で、私たちアロマセラピストが行うアロマカウンセリングでのレポートや、その他個々の体験による記述や口頭での結果報告はここに該当します。

これらがいわゆるAnecdotal Evidenceといって逸話的なエビデンスとされるのです。アメリカのアロマ界で活動する方なら、一度はEvidence based practiceなんて言葉は聞いたことがあると思います。しかし、それらのエビデンスの多くはこの逸話的エビデンスなのです。

アロマセラピーなどの代替医療が医療業界から信頼されない一番の理由はここだと思う。

クリニカルスタディーによる科学的根拠とは

下から3つ目からは臨床研究となり、一次研究の部類に入ります。その中でも症例対象研究コホート研究は観察的研究と呼ばれ、前者はこれまでの経過を基に症例の研究をするのに対し、後者は未来に症状が起こることを推定して経過観察する試験です。これらはいわゆる治験などが該当しますよね。

あとは、以前アロマが有名になったきっかけになった放送で、アルツハイマー認知症の患者に対する実験もありましたが、これは症例対象研究ですね。まぁ、私たちアロマセラピストが見られる研究結果はこの辺りまでかなと。それ以降にいくとなかなか一般の私たちでは手に入らなかったり、解読にもそれなりに専門的な知識を要しますので、見ても理解できないという結果になるかもしれません。

メータ分析なんかは、メンタリストDaiGoさんの論文解説ではよく聞く単語ですが、これはこれまでの臨床結果を基に統計を取ったり、様々な角度から分析する研究です。こういった研究結果は、少なくとも素人がネットで探し出すことは難しいことや、アロマ界ではなかなか難しいレベルのものです。ないわけではないんですが、少ないです。理由はこのあと説明します。


(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

逸話的エビデンスと科学的エビデンスの是非

アロマ界に存在する逸話的エビデンスですが、ここをもう少し深ぼって特徴を見ていきましょう。

逸話的エビデンスの特徴

逸話的エビデンスは一般素人が行いそれを文章や口頭で結果を報告する手のタイプですので、当然様々な要素が確実性を邪魔することもあります。その要素は大きく分けるとこの2つです。

●観察期間の詳細
●個人のバイアスの影響

例えば、ある人が腰痛にウィンターグリーンの精油を毎日患部に塗って、2週間で改善したと報告したとします。しかしこれだけでは、ウィンターグリーンが腰痛に効果があった根拠としては不十分な要素が大きすぎます。

例えば、その人が治療の間に、針灸や整体にも通っていたとか、市販の痛み止めを飲んでいた、ピラティスやストレッチを行っていたとかがあれば、相乗効果がもたらされたことも考えられますし、精油だけが改善要因ではない可能性がありますよね。あとは他の症状で飲んでいた薬が実は痛み止めにも効果があったなんてこともあります。

場合によっては生活習慣を変えてウォーキングや瞑想などを同時期に取り入れ始めていて、ストレス因子が軽減することによって鎮痛作用をもたらした可能性もあります。

更にその人の食事やサプリメントなどの食生活、ライフスタイル、記憶違い、バイアス、などの影響で結果は変わってくるものです。バイアスの種類には、認知確証後知恵の3種類ほどありますが、その中でも認知バイアス確証バイアスは特に大きいのかなと思います。

認知バイアスはこれはこうであるといったように、既に知っている知識から思い込みがある場合。確証バイアスは都合の良い情報ばかり集めてしまう場合です。

この場合考えられるのは、ウィンターグリーン=痛み止めに良いとされる、という認知バイアスや、自分にとってアロマセラピーは最も効果がある代替医療だと考えがある場合、やはりそれを支持するような可能性が出れば、そこだけを切り取って主張する確証バイアスは、私も含めてどのセラピストにもある事とと思います。

といった感じで、逸話的エビデンスは確実性は乏しいものではあります。

科学的エビデンスの落とし穴

では、科学的根拠なら確実性もあり信用していいのか?と言えば、そうでもなかったりもします。素人的には、逸話的なエビデンスとは違い一見完璧な証拠ともいえる科学的なエビデンスですが、文献を読む際にいくつか注意点があります。

① 試験や被験者数が薬物医学治験などと比べて圧倒的に少ないこと
② 逸話的根拠では多くの効果が見られたが臨床試験で結果が出なかったものは、実際に効果がないと結論づけられてしまうこと

分かりにくいので一つづつ解説すると、1つ目は、アロマセラピーの臨床試験はこれまでも多くなされていますが、とはいえ試験数や試験に参加した人の人数というのは、薬物治験と比べれば比較にならないほど少ないものです。

この理由には政治的な部分が入ってくるようにも思いますが、薬物治験の場合、国からの資金的援助が受けられることも多いです。特に今回のコロナウイルスのワクチン開発では、トランプ大統領がアメリカのバイオテック企業に経済援助をしたことは記憶に新しい情報ですよね。

しかし、薬物と比べて不確実性の高い代替医療に国が援助することはなく、資金面的に大規模な臨床試験を行うことは不可能に近いのです。ですので、必ずしも科学的エビデンスとして提示されている文献のデータが正しいかというと、そうではない可能性があるという事です。

そして2つ目ですが、一般認識として、多くの人はこのヒエラルキーの上部=絶対正しいと信じます。代替医療のアンチである専門家たちは、例え100個の逸話的エビデンスを提示しても、1つの科学的エビデンスを信じることでしょう。

このティスランドインスティチュートのタマラ氏の記述によれば、最近のオーストラリアのフォーカスグループの調査で、がん患者が症状の緩和(鬱、痛み、吐き気などを和らげること)に代替医療を使わない理由が、この科学的エビデンスが少ないことが原因であると主張しています。

しかし、アロマセラピーやマッサージだけを取っても、実際に鬱改善や鎮痛、吐き気やダルさの緩和には、多くの逸話的エビデンスが存在しますよね。


(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

アロマセラピストがこれらのエビデンスをどう取り入れるか?

当然これらエビデンスをどう使用するかは、個々のセラピストの思考に基づくものですし、私がどうこう言う部分ではありません。そしてほとんどの場合、施術中やクラス中に、クライアントからこの精油の〜効果のエビデンスを提供してください、なんて露骨に聞かれたことはあまりないように思います。

ですが、セラピストとして今後、"このエビデンスはなんなんだろう?” というところを意識することは、これからアロマセラピーを多くの人に信用してもらうために大切なのかもしれません。

その根拠がどこから来ているのかを明確にすることが大切

私としては、これらエビデンスを自分の体験談と照らし合わせて、トリートメントプランを決定する際の材料とするようにしています。クライアントに使用する場合も、特定の精油とその使用方法を取るときは、それらがどういった根拠に基づいているかを、もし聞かれた場合に備えて説明できるようにしています。

私は、例えそれが自分の一個人の経験談だったとしても、他人の経験による逸話的エビデンスだったとしても、積極的にインプットするようにしています。その理由は先ほど説明した通り、アロマはお薬と違って臨床実験の研究よりも、圧倒的に個人の体験談の存在が多いからです。

場合によっては、よくよく考えてみると、この精油のこの効果って、どこからきているんだっけ?なんて記憶を遡り、文献を探し出しても見つからない、なんてこともあります。

ですが、それならその時点の根拠で良いのです。例えば、私が~先生のクラスを取った時のこの話によると、こういう効果があり、実際自分が使ってみたときはこうでした、のような感じで説明できれば、私は十分だと思います^^

もちろんこれから先、より詳しい臨床試験や研究がどんどん出てきてほしいとは思っていますけどもね。


(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

まとめ

アロマ界で既に存在しているエビデンス全体を見れば、まだまだ世間から信頼度は低いのかもしれませんが、これらは今後十分に改善できる余地があると思っています。

アメリカにも日本にもたくさんの素晴らしいセラピストがいます。中には既に医療従事者がアロマに興味を持って、ブログやYoutubeで発信して下さってる方も最近ではよく見られるように思います。そういった方々を筆頭に、セラピストやプラクティショナーもアロマのエビデンスを明確に伝え、そしてそれらに基づき実践し、今後更にアロマの良さを広く知ってもらいたいですね。

参考文献

本日の参考文献はティスランドインスティチュートのタマラ氏のブログを参考にしております。
https://tisserandinstitute.org/the-case-for-an-evidence-based-aromatherapy-practice/

  • B!